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第10回緊急被ばく医療準備ネットワーク(REMPAN)国際会議への派遣

平成16(2004)年10月に,ロシア連邦サンクト・ペテルブルグ市で開催されたREMPAN国際会議に,HICARE理事を派遣しました。

派遣者名:

神谷 研二 HICARE理事
広島大学原爆放射線医科学研究所 所長

派遣先:

第10回緊急被ばく医療準備ネットワーク(REMPAN)国際会議
(於: ロシア連邦サンクト・ペテルブルグ市)

会議日程:

平成16(2004)年10月13日(水)~15日(金)

REMPAN会議の概要:

(1) 会議の経緯
  チェルノブイリ原子力発電所事故では,多くの国々と人々が事故の影響を受け,深刻な健康被害や社会的被害を受けました。一方,医療や産業では,放射線を利用する機会が益々増加しており,放射線を利用する技術は私たちの生活にとって不可欠なものとなっています。そのため,万が一の事故に対する準備についても取り組みを進めていくことが必要です。しかし,緊急被ばく医療の専門家は世界的に見ても非常に少なく,いざ事故が起きたときにその国だけで対処出来るだけの専門家が揃っているとは限りません。そこで,WHO(世界保健機構)は,IEAE(国際原子力機関)と協力して緊急被ばく医療の専門家をネットワークで繋ぎ,放射線事故が起きたときに世界中の専門家が協力して被害者の治療にあたることができる体制を作ろうとしています。そのための会議が,緊急被ばく医療準備ネットワーク(REMPAN)国際会議です。
 
(2) 会議の内容(概略)
今回の会議の内容は,以下の通りです。
 1) REMPANに参加している各国28機関の過去2年間の活動状況の報告と評価
 2) 放射線事故時の連携体制強化に向けた戦略
 3) 放射線事故に対応するための通常の訓練や練習,及び医師の認定医制に関する将来計画
 4) 2005年に行われるCONVEX-3(核事故を想定した国際訓練)でのREMPAN訓練の在り方について
 5) 緊急被ばく医療におけるテレ・メディシン(遠隔地医療)の活用について
 6) 最近の放射線事故から学んだ医療の評価と知識の共有化
 7) 1998年にIEAE-WHOが共同出版した「放射線障害の診断と治療」の安全報告書No2の最新版化について
 
(3) 出席者等
  WHOのマーガレット・チェン所長をはじめWHO とIEAEの担当官に加え,日本,アメリカ,フランス,ドイツ,英国,イタリア,オーストリア,フィンランド,ブラジル,ハンガリー,中国,韓国,ロシア,グルジア,アルジェンチン,ウクライナ,及びベラルーシから緊急被ばく医療の専門家が出席しました。日本からは,鈴木(放射線影響研究所),明石(放射線医学総合研究所),長瀧(日本アイソトープ協会),山下(長崎大学),神谷(広島大学)ら総勢8名が参加しました。
 
(4) 会議の状況
  今回の会議は,主催者である緊急被ばく医療・全ロシアセンターのアレクセイ・ニキフォロフ所長の挨拶で始まりました。会議は,朝から夕方まで3日間に渡り開催され,議論は各国から参加した専門家により極めて活発に行われました。あまりの熱心さのために,しばしば審議時間の延長と休憩時間の短縮が行われました。会議以外でもホスピタリティ溢れる歓迎を受け,各国の参加者はますます好感を抱き,胸襟を開いた議論が進みました。

REMPAN会議風景

所感:

各国の緊急被ばく医療の専門家の活発な議論に加わり,大変良い勉強になると同時に,今後の活動に対する良い刺激になりました。放射線事故は希にしか起きない事故ですが,各国の専門家は,核テロを始め放射線事故が起きる可能性を現実のものとして捉えているように見えました。広島には,被ばく医療で世界をリードする実績があり,この実績に今後も先進的な医療を取り入れることで世界の被ばく者に多くの貢献が出来ると感じました。実際にHICAREは,この国際会議に専門家を派遣することで,広島の被ばく医療の知識や技術を,この会議を通じて,世界の被ばく者に役立てようとしています。また,逆に世界の情報をHICAREに持ち帰ることで今後の研修活動に活用しようとしています。この様なHICAREの活動は,市民からは見えにくい活動であると思われるが,ヒロシマの経験を世界に役立てるという意味からは大変重要な活動だと感じました。世界は,広島の被ばく医療の実力に多くの期待を寄せています。