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ベラルーシ共和国に医師等を派遣

期間:

平成16年5月22日~平成16年6月5日

構成員:

団 長澤野文夫広島赤十字・原爆病院 第5内科(内分泌・代謝科)部長
 秘書長谷岡昭良     同        事務部長
 団 員梶原忠雄     同        病理検査課長
 団 員田中久美子     同        看護師
 医療通訳山田英雄 
 団 員曽山和彦日本赤十字社広島県支部  事

検診成果:

ブレスト内分泌診療所での甲状腺検診風景

1)ブレスト市
  甲状腺検診
   受診者数:43名
   乳頭癌: 6名

2)ミンスク市
  糖尿病検診
  75gOGTT施行者数20名

医療相談(患者診察診断依頼)・講義:

ミンスク市第10病院でのミンスク大学医学部大学院生への講義

(1)ブレスト市
  ●特発性副甲状腺機能低下症
  ●1型糖尿病
 
(2)ミンスク市
  ●遷延性低血糖症例(インスリノーマの疑い)関係教授・部長達と討論
  ●糖尿病合併バセドウ病
  ●医学部大学院生に糖尿病診断学の講義

被爆者医療に関わる友好会見:

1)ブレスト市
    5月27日ブレスト州知事と会見 
2)ミンスク市
    5月24日ベラルーシ共和国赤十字総裁ロマノフスキー氏と会見
    6月1日ベラルーシ共和国保健大臣と会見

所感:

 1991年朝日新聞社と日本赤十字社共催で開始された『チェルノブイリに光を』のキャンペーンで日本に招いた第1次被災児達を,たまたま私が1990年に当院に内分泌内科を専門とする医師として赴任し,触診や超音波検査,内科では広島で初めて開始していた穿刺吸引細胞診の手法などで甲状腺癌の検診を行って以来,現地の医師の甲状腺癌・甲状腺疾患の検診・診断能力向上の指導をほぼ毎年当院で行い,また1997年にはミンスクで行ってきたことは,当事者の医師達はもちろんのこと,日本赤十字社やその他の支援団体によるボランティア活動と相まって,ベラルーシの国や州のレベルでは日本の有益で心暖まる行為として感謝され,暖かい友好の意が会見ごとに示された。

 今回の医療検診団派遣は,放医協の支援を受けて実現したものであるが,派遣先での会見では日本赤十字社として曽山広島県支部事務局長が,検診団代表として私が言葉を述べた。

 ブレストへ向かう途中立ち寄ったピンスク市の赤十字養護施設では,伝統的看護婦衣装が現役で,玄関で受けたパンと塩による歓迎の儀式と,収容され暮らしている人々やその世話に当っている看護婦さん達の姿・有り様はまさに赤十字の原点を見るようで大変感激した。

 ブレストでは今回初めて随行した病理検査技師梶原さんに,当初現地では無理であると聞かされていたパパニコロウ染色を試みてもらったところ,なんとか成功し,今回日本より持参し参考としてプレゼントした細胞診アトラスも多くがパパニコロウ染色のため現地の医師達も大変喜び,今までギムザ染色のみで診断していた診断能力の向上に寄与することができた。また今回は吸引穿刺で得た細胞を直ちに染色し,梶原さんがスクリーニングし私が確認,エコー等臨床所見と合わせて最終診断するという方式でブレスト滞在中にすべての受診患者の診断まで完了させたことは,医療通訳の山田氏によると他の支援グループでも例はないそうで現地の医師達もたいそう喜んでくれたようである。また私の吸引穿刺のとき田中看護師が適切に介助してくれたことはいうまでもない。
 ミンスクでは今までの甲状腺癌診断に関するものばかりでなく,もう一歩進んだ医療友好関係を構築する端緒として75gOGTTを主とした糖尿病検診を行った。なにぶんにも全くはじめてのことだったため開始するまでは何かと大変であったが,田中看護師にも奮戦して頂いてなんとか20名に施行し,問診もかなり詳細に行ったので,数は少ないが少しはベラルーシ人の特徴の一端でも垣間見れればと思っている。また病院の担当責任医師は,今回の我々のtrialが間違いなく彼等のためになったと述べた。
 またブレストでもミンスクでも診断のつきにくい症例や,治療法について内分泌専門医としての相談を複数うけたことは名誉なことであった。

 今回の旅程すべてにおいて谷岡事務部長に財務担当という重要かつ煩雑な役割をお願いし御快諾,履行して頂いたことに深謝したい。

 最後に毎回巧みなロシア語で私達を助けてくれている我が友人山田氏に感謝の意を表する。

 (広島赤十字・原爆病院第5内科(内分泌・代謝科)部長 澤野文夫)

パパニコロウ染色を試みる梶原病理検査課長

奮戦する田中看護師