活動状況(年度別)

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活動状況(年度別)

韓国・被爆者医療研修団の受け入れ

 韓国の大韓赤十字社と共同で、韓国で被爆者医療に従事している医師・看護師からなる被爆者医療研修団6名を受け入れ、放射線被曝者医療に関する研修を行いました。

研修団員名簿:

団 長Cho Ihn-Ho嶺南大学病院核医学部長
副団長Jang Sang-Suk釜山医療院看護部長
団 員Kim Mi-Jooソウル赤十字病院看護師長
団 員Koo Il-Nam慶熙医療院看護師
団 員Cho Jeung-Aeワレス記念浸礼病院看護師長
団 員Park Deuk-Sook大邱赤十字病院看護師長

(財)広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センター所長の佐々木氏と

期間:

平成18(2006)年7月3日~7月7日

研修機関等(日程順):

(財)広島原爆障害対策協議会
(財)放射線影響研究所
広島大学原爆放射線医科学研究所
広島赤十字・原爆病院
平和記念資料館視察ほか

嶺南大学病院核医学部長 Cho Ihn-Ho

広島大学原爆放射線医科学研究所 松浦教授と(右端が筆者)

所感:
 一週間という短い期間でしたが、多くを学んで知る事ができました。原爆被害がここまで大きく悲惨だとは思いませんでした。特に幼い学生達の被害が大きかったので胸が痛み、戦争を起こした当事者はこの惨事から逃れたような気がして、怒りすら感じました。

 原爆被爆が急性症状以外に多くの長期的な後遺症を残し、これを治癒する為のHICARE関係機関の努力に感銘を受けました。

釜山医療院看護部長 Jang Sang-Suk

広島赤十字・原爆病院 阿部看護部長と(前列左が筆者)

所感:
 日本は今回が初めてでした。広島と言えば原爆が投下された所という概念しかありませんでした。そして日本人に対する特に日本政府に対する思いはあまり好意的ではなかったと思います。しかし普段思っていた事とは大違いで、直接来て生活して見ると本当に私の考えが浅かった事が分かりました。

 HICAREの仕事を見て、廃墟の地から復興させて美しい都市を作り、悲劇だったけど廃墟の苦しみを乗り越え今度また来るかも知れない悲劇を予防する為に研究している先生達の姿を見て、日本の違う一面を見たような気がします。

 また日本の看護師達の全看護(Total Nursing Care)を見ながら学ぶ所が多くありました。
韓国のニュースで見る日本の断面ではなく、違う一面を知る事ができて嬉しく思います。誠実に一つでも多く伝えようと努力している先生達の姿が感動的でした。

韓国での医療活動:
 釜山医療院で行政看護監督を引き受けています。看護部の全般的な看護行政と看護実習生の教育及び管理、そして当医療院の看護師の親切教育を担当しているし、整形外科患者が主に入院する病棟の看護師長も兼任しています。
 病院の主要政策会議に参加しています。

ソウル赤十字病院看護師長 Kim Mi-Joo

平和記念資料館 高野副館長と(左から5番目が筆者)

所感:
 研修するチャンスを与えてくれた HICAREの 関係者の皆様に毎日感謝しながら過ごした研修日がもう終わると思うと残念です。ソウルで想像した広島より平和記念資料館で見た当時の様子や被害状況は、あまりにも残酷で原爆の破壊力も想像を絶するものでした。

 都市を再建し、原爆被爆者の診療、健康検診、放射線影響研究など、世界平和を願う広島と HICAREの努力に深く感銘を受けると共に多くを学び感じました。

 このような経験を生かして韓国に戻ったら原爆被爆者にさらに力になれるよう努力するつもりです。赤十字原爆病院の看護部見学と看護部長との研修で得た経験は、これからの看護業務に大変役に立つと思います。

 今後も多くの医療関係者がこの研修を受けられる事を願いながら、私共に有益な時間を与えてくださったHICAREの会長様を初め、原爆障害対策協議会の所長様、原爆病院の看護部長や関係者の皆さん、HICARE事務局の皆様に深く感謝するとともに、皆さんのご健康と HICAREのご発展を祈ります。

韓国での医療活動:
 看護管理者として次のような看護科のすべての業務を指揮・調整します。

○看護科の人事管理、学生実習関連業務(看護科職員教育、病棟管理、他部との業務協力など)
○病院運営委員会及び各委員会に参加
○看護科を通しての対外的な活動

慶熙医療院看護師 Koo Il-Nam

(財)放射線影響研究所臨床研究部 錬石副部長と(右から2人目が筆者)

所感:
 個人的にこの研修に参加できて大変光栄でした。近くて遠い日本ではなく、近い日本を感じながら、研修期間の間、HICARE関係者の細心なご配慮と真心を感じました。HICAREの活動を知ってHICAREに魅力を感じています。

 二日にかけて講義をしてくださった佐々木英夫先生の<被爆者健康管理>の時は、健康管理手当がもらえない対象被爆者が早く受け取れる事を願ったし、練石先生の<放射線が人体に及ぼす影響>の講義の時は、歯のエナメルからも線量測定が可能である事を初めて知りました。

 何より平和記念資料館の視察が一番印象深かったです。被爆の前と後の模型を見た瞬間、胸が痛みました。原爆投下が人間に示唆する教訓ではないかと思います。

 最後に私達研修団に情報交換や親睦を深める機会を与えてくださったHICAREに心から感謝します。

韓国での医療活動:
1 放射線治療の時の患者管理業務(教育、相談、安全、患者登録等) 
2 診療補助業務―診療時、患者を把握して(診断名、組織細胞、手術有無、抗癌有無等) 医者にPresentationして PACS(映像資料)を見せて診療時 assistする。
3 物品、環境管理業務―物品を請求して診療室を清潔に維持する。
4 教育参加―看護部内外教育参加及びホスピスチームの会議に参加するボランティアの教育担当。

ワレス記念浸礼病院看護師長 Cho Jeung-Ae

研修風景(左端が筆者)

所感:
 被爆の実態と、それによって発展してきた医療水準を目の当たりにして、また被爆者達に気配りする医療関係者の方々の姿を見て羨ましく思われました。

 当病院へいらっしゃる被爆者の方々を見ると、補償を受けることができない、誰か償ってくれる人も償ってあげようとする人もいない可哀相な人達だと思っていましたが、彼らを助ける為に努力している HICAREの皆さんと赤十字病院職員の方々を見て、私が勘違いしている所が多いということが分かりました。

 二世にも遺伝するのではないかと心配している被爆者の方々と二世の皆さんの心の平安とご健康をお祈りします。

韓国での医療活動:
 重患者室 3 パート (外科重患者室,内科重患者室,心臓重患者室)を管理し、行政業務を遂行しています。
 3パートの緊急時は実務に携わり、看護と心肺蘇生法を施行して各パートの業務が效率的に運営できるようにします。
 3パートの人事評価をチェックし、教育も担当しています。

大邱赤十字病院看護師長 Park Deuk-Sook

研修風景(左から4人目が筆者)

所感:
 HICAREの活動について詳しく分からないまま研修に参加したが、広島の研修で多くの事を知りました。

 HICAREを構成している多くの機関が調査研究した成果を、世界中の被爆者達への医療に有效に活用する事を目的としている事が分かったし、今も世界各地で発生した事故で被爆して苦しむ人々の為に医療の研究に邁進しているのが 「放射線影響研究所」、「広島原爆対策協議会」を訪問して見て聞く過程で分かりました。

 これらの研究がすばらしい成果を生み、その成果が医療の現場で被爆者の方々に役立つことを祈っております。微力ではありますが、そのための力になれればありがたいと思います。
関係者の皆さんの休まぬ研究、努力に感謝します。

韓国での医療活動:
 健康検診センターで看護師長として勤めている。規模の小さな病院なので総合検診のみの検診センターではなく、成人病や癌、就職・学生検診など、さまざまな検診を引き受けています。

 日本と同様、満40歳以上の人々を対象に2年に一度ずつ実施する生活習慣病の検診は、基本である血液検査と心電図、胸部X線検査が含まれる簡単な内容の検査ではあるが、かなり多くの人が 2次検査対象者になるのを見ると生活習慣病がますます増えているような気がします。

 また癌検診も生活習慣病の検査と同様に満40歳以上を対象に2年に一度ずつ実施しています。乳癌、大腸癌、子宮癌、肝臓癌の5 種類の検査で、たまに深刻な疾病が発見されるが、早期治療につながり、良い結果を得た時は大変やりがいを感じます。

 就職検診は就職時に受ける検診で、体重、身長などの全般的な検診をします。
 学生検診は小学校1年・4年、中学校1年、高校 1年生を対象にする簡単な検診で、肥満の学生には血液検査が追加されます。

 総合検診では、血液検査、骨密度、超音波、乳房、子宮、胃内視鏡などの検診や検診結果の相談案内、結果郵送など、検診業務の全体的な管理監督をしています。総合健診は大きく分けると、来院検診と出張検診があります。
 
 以上のように、看護師として治療や看護を行っているというより、病気予防の仕事をしています。